男性型脱毛症より多い「円形脱毛症」
病院へ受診する薄毛のタイプは男性型脱毛症よりも円形脱毛症の方が多い
薄毛に悩む人の多くは「男性型脱毛症」だと思っていたのですが、どうやらそうではないみたいです。皮膚、毛髪再生医学の板見智医師の著書「専門医が語る毛髪科学最前線」には以下のように書かれていました。
「円形脱毛症という病名は非常に有名です。実際、阪大病院では男性型脱毛症よりも受診される患者さんが多い脱毛症」
徐々に薄くなる男性型脱毛症はある意味「運命」として受け入れられる傾向がありますが、一部、若しくは広範囲にわたり抜け落ちる円形脱毛症は明らかに異常であり、「病気」とリンクしている可能性があるということが一般的に知れ渡っているのもその原因の一つでしょう。
アメリカの円形脱毛症患者の会(NAAF)が発行したフライヤーにはこのように書かれていました。
「円形脱毛症は命に関わる病気ではありませんが、人生が変わってしまう病気です」
円形脱毛症のタイプ
円毛脱毛症は、比較的円形に脱毛することが多いのでこの名前が付いていますが、必ず円形に脱毛するとは限りません。いくつかのタイプに分かれます。
単発型の円形脱毛症
一番多く見られる円形脱毛症のタイプで、一箇所から二箇所程度に1センチから数センチサイズの円形の脱毛が発症します。重度ではなく、ある日突然見つけることが多く、単発型の円形脱毛症は治療しなくても治るのが特徴です。放っておいていいということですね。
多発型の円形脱毛症
単発型が進行したり、最初から数箇所から数十箇所の多発した脱毛箇所がくっついて広範囲に広がるタイプです。
全頭型の円形脱毛症
多発型が進行し、髪がほとんど抜けてしまうか、まばらに抜けてしまい、最終的には全ての髪が抜けてしまいます。円形脱毛症の10人に1人に見られる症状です。
汎発型の円形脱毛症
頭の髪だけでなく、全身の毛が抜けてしまうタイプで、すでに円毛脱毛症の名前を飛び越えた最も重い症状です。
円形脱毛症の原因
単発型の円形脱毛症は「ストレス」による脱毛が原因ではないかと言われていますが、先ほど紹介した通り、基本的には放っておいても自然治癒します。問題なのは、多発型の円形脱毛症以降の重度のタイプです。
これら重度の円形脱毛症の原因は全て特定されているわけではありませんが、近年の研究で確定的なのは「臓器特異的自己免疫疾患」が原因の一つだということです。
円形脱毛症は花粉症のようなもの
円形脱毛症に悩まれている方は深刻に悩まれているので、このような例えは不謹慎かもしれませんが、円形脱毛症は花粉症と発症するメカニズムが似ています。
体の免疫機能は、細菌などの有害なものを認識するとリンパ球が抗体を作り出し、攻撃もしくは排除します。しかし、何らかの理由で本来攻撃する必要がないものも攻撃対象として免疫機能が活動することがあります。
円形脱毛症の方の毛根を包む「毛包」には、リンパ球が集まり、炎症を起こしている症状がみられます。リンパ球には免疫の機能を促進するものと抑制するものがありますが、この2つのリンパ球がバランスが保てず健康な細胞を攻撃してしまい脱毛を引き起こしてしまいます。
これが無害である花粉に対して免疫機能が活動してしまう花粉症に似ているということです。
円形脱毛症は遺伝的要素が強い
円形脱毛症に悩む人の30〜40%は遺伝的要素によるものだということがわかっています。白斑や膠原病などの自己免疫疾患の方がかなりの高い確率で円形脱毛症を患っています。
また、アトピー性皮膚炎も同様で、特に若くして円形脱毛症に悩む方の56%はアトピー性皮膚炎にも悩まされているというデータが国立成育医療センターが発表しています。
円形脱毛症の治療方法
単発型の円形脱毛症は、先にも記載した通り放っておいても改善するケースが多いのですが、多発型以降の円形脱毛症の改善には以下の治療が行われています。
ステロイドによる円形脱毛症の治療
ステロイド剤には免疫機能を抑える働きがあるため、アトピー性皮膚炎をはじめ自己免疫の疾患に対しては比較的めじゃーな治療方法です。
塗り薬だけでなく内服薬や注射などもあり、複数の組み合わせで治療を行います。
しかし、ステロイド剤の長期使用による副作用を危険視する声も少なくありません。自己免疫機能を抑制する薬ですので、本来排除すべき異物に対しての働きも抑制されるわけですから。
ストロイド剤の副作用には、胃の疾患や骨粗鬆症などがあります。
液体窒素による円形脱毛症の治療
狭い範囲の円形脱毛症に用いられる方法で、脱毛箇所に液体窒素により刺激を与えます。同様の治療にドライアイス圧低療法もありますが、痛みを伴うこともあり子供などには適用されない治療法です。
円形脱毛症は完治する?
アトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患が見られない軽度の円形脱毛症のケースでは、1年以内に80%の方が改善するというデータがあります。
また、欧米では34%〜50%が1年以内に改善。15%〜25%は全頭型または汎発型へ悪化。その内からの改善は10%だという報告もあります。
脱毛面積が少なければおおよそ改善し、広い場合の改善は難しいというのが現状です。
僕個人が思うことですが、アトピー性皮膚炎は食べ物との関係も重要ですので、円形脱毛症も同様のことが言えると思います。病院での治療法はどれも体への負担が大きい物ですので、できれば身の回りを整えることから始めることが大事ではないでしょうか。