抗がん剤でなぜ「薄毛」になる?薬が薄毛の原因になる
ドラマや映画で観る抗がん剤の副作用「脱毛」
昔からがんに冒された患者さんは脱毛するため帽子を被ったり、その脱毛をする様をシリアスに描写しているシーンをドラマや映画で観てきました。「世界の中心で愛をさけぶ」などが有名ですよね。
また、芸能人の方が自分ががん患者であることをカミングアウトし、他で同じようにがんと闘っている人の励みになるようにと、その記録を残す過程で「脱毛症状が酷くなる前に髪を切りました」といった具合に、「脱毛」することが当然未来に起こりうるモノとして捉えています。
こういったがんを題材にしたメディアによって、がんを患ったことがない人でも抗がん剤を投与すると間違いなく脱毛するということが常識のように知れ渡っています。ではなぜ抗がん剤を投与すると髪が抜け、薄毛になるのでしょうか?
「がん」は成長する病
抗がん剤がどういった薬かを知るには、まずがんがどういった病なのかを知る必要があります。
人の体は全て「細胞」によってできています。その細胞は、体の状態により増殖したり停滞したりとその成長をコントロールします。
例えば、ケガをすると、その傷を治そうと細胞が増殖します。そして、ケガが治れば細胞は停滞します。しかし、がん細胞は体の状況に関係無く、常に増殖します。そして周囲の正常な細胞なども巻き込み破壊したりします。
がんを抑制するということは細胞の増殖を止めること
抗がん剤はこのがん細胞が増殖するのを防ぐ働きがあります。しかし、薬は血液によって体の隅々まで送られますので、都合良くがん細胞だけを抑制することはできません。他の健康な細胞へも影響を及ぼします。
- 骨髄の造血細胞
- 口腔粘膜
- 消化器官粘膜
など、細胞分裂が盛んな細胞も抗がん剤の影響をまともに受けてしまいます。
そして、髪を作り、支える「毛母細胞」も細胞分裂が盛んなので、抗がん剤の影響を受けるということになります。
細胞の増殖が止まり、脱毛。そして薄毛へ
抗がん剤も全てが同じ薬ではなく、成分や投与量、投与方法によて脱毛、薄毛の程度は違ってきます。もちろん個人差もありますが、かなりの広範囲に脱毛の症状が出て、多くのケースで薄毛になることが確認されています。
脱毛が始まるのは、抗がん剤を投与してから1〜2週間程度で、この脱毛が目立ち薄毛になるのは1〜2ヶ月後です。
抗がん剤による脱毛は止められませんが…
抗がん剤による脱毛、薄毛は止めることができませんが、抗がん剤の投与を止めるともともと薄毛で無い限り髪はまた生え始めます。
抗がん剤を止めたばかりでは、毛管の基部が細くなっている毛の脱毛はもうしばらく続きますが、次第に回復し始めます。
ちなみに、抗がん剤は全身に行き渡るので、頭髪以外の毛も抜けますが成長期の毛は少ないので、そんなに気になることはありません。